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新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明~待ったなしの新収益認識基準対応

計6回にわたり新収益認識基準対応プロジェクトの進め方について解説する本連載では、プロジェクトで扱うべき内容や、【影響度分析】について触れるとともに、初回では会社としての会計処理(案)を決定するにあたって、留意すべきポイントとして以下の3点あげ、このうち①②についてご説明いたしました。

① 自社取引に関する網羅的な検討
② 新収益認識基準における論点の網羅的な検証
③ 新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明

今回は、このうちの「③新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明」についてみていきます。

※第一回はこちらからご確認ください「待ったなしの新収益認識基準対応~いまから間に合わせる対応プロジェクト

1.「③新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明」とは?

新収益認識基準はこれまでの一般的な常識を土台としつつ、より適切に取引や会社の実態が会計上表現できるように従来の会計処理に変更を加えて定められるものであります。したがって、新収益認識基準を提供することで、想像もつかなかった会計処理になることはそれほど多くはない印象です。

しかし、自社における会計基準の採用を決定するにあたって、昨今の会計監査を取り巻く環境を考えると、なぜその結論を採用することとなったのか、理論的に説明が行えることが不可欠であります。【理論的に説明している】とは、新収益認識基準の規定に沿って、判断過程を説明する、ということです。

【理論的に説明している】とその対極にある【直感的に結論を出す】の違いを具体的に見るために、新収益認識基準の適用指針で示されている『[設例6] 財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定』の中の『[設例 6-1] インストール・サービス』を取り上げてみます。

2.[設例 6-1]でみる、【理論的に説明している】といえる状況

まず、『[設例 6-1] インストール・サービス』では、会計処理方針を検討するための前提条件として(1)~(3)が示されています。

前提条件(1)
(1) A 社(ソフトウェア開発業者)は、B 社(顧客)に対してソフトウェア・ライセンスを移転するとともに、インストール・サービスを行い、また、ソフトウェア・アップデート及びオンラインや電話によるテクニカル・サポートを 2 年間提供する契約を締結した。


前提条件(1)において、A社が顧客に対して行う「約束ごと」は以下の通りであり、便宜上、それぞれに以下のような売上金額を付してみます。

  • ① ソフトウェア・ライセンスの移転 2,400円
  • ② インストール・サービス 1,200円
  • ③ 2年間のソフトウェア・アップデート 240円
  • ④ 2年間のテクニカル・サポート 480円

以上①~④の合計で4,320円

前提条件(1)を読んで、ある程度会計の経験のある方の中には、直感的に次のような会計処理が正解、と感じる方も多いかと思います。

■会計処理(案)1
・ソフトウェア・ライセンスの移転時に①の2,400円を売上計上
・インストール完了時に②の1,200円を売上計上
・その後、2年間にわたって月割りで③④の計720円を売上計上

あるいは、次のような会計処理が正解、と感じる方もいるかと思います。

■会計処理(案)2
・ソフトウェア・ライセンスのインストール完了時に①②の計3,600円を売上計上
・その後、2年間にわたって月割りで③④の計720円を売上計上

ただ、会計処理(案)1・2に対して、①と②と③④、あるいは、①②と③④は、なぜ別々のタイミングで売上計上されるのが正解なのか?あるいは、①や②について、ソフトウェアが使用される2年間にわたって収益認識すべきではないのか?といった質問を監査人から受けたときに、明快な回答ができる方は多くないものと思います。

じつは、新収益認識基準では、[設例 6-1]において前提条件(1)だけでは、会計処理を決定することはできず、前提条件(1)に加えて、前提条件(2)(3)を提示することで、①のソフトウェア・ライセンスの移転が、②~③とは別のタイミングで売上を計上することができるものとしています。(ソフトウェア・ライセンスについて一括売上計上できるか?についてはさらに[設例 23]にて考察しています。)

では、具体的に前提条件(2)(3)の内容を見てみましょう。

前提条件(2)及び(3)
(2) A 社は、ソフトウェア・ライセンス、インストール・サービス及びテクニカル・サポートを独立して提供している。インストール・サービスには、利用者の使用目的(例えば、販売、在庫管理、情報技術)に応じてウェブ画面を変更することも含まれる。なお、ソフトウェアは、アップデートやテクニカル・サポートがなくても機能し続けるものである。

(3) A 社が提供するインストール・サービスは、同業他社も日常的に行っているものであり、ソフトウェアを著しく修正するものではない。


上記前提条件(2)(3)は、以下に記載した新収益認識基準の第34項の規定に沿った検討を行うためのものでしたが、ピンときましたでしょうか?具体的な検討過程は、適用指針の[設例 6-1] (ソフトウェア・ライセンスの売上計上時期については[設例 23])の解説に譲りますが、①~④の「約束ごと」について、「別個の財又はサービス」の考え方を適切に適用することが求められるものでした。

(別個の財又はサービス)
34. 顧客に約束した財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、別個のものとする。
(1) 当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可能性があること)
(2) 当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できること(すなわち、当該財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)

新収益認識基準の第34項にあてはめて、「①ソフトウェア・ライセンスの移転」は、その後の②~④と「別個の財又はサービス」であることが整理できれば、【理論的に説明している】状態といえ、会計処理(案)を決定時の留意点「③新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明」ができているといえます。

逆に、[設例 6-1]において、なぜ前提条件(2)(3)が必要であるのかピンとこないようであれば、「③新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明」は難航することになりそうです。さらに言えば、自社の取引実態調査の過程で、前提条件(2)(3)に相当する情報を把握・整理していないようであれば、すでに自社の会計処理方法を社内で決定していたとしても、後日監査人からの質問に耐えられず、検討やり直しとなる可能性が高まります。

新収益認識基準の適切な理解に基づき、取引内容を調査し、結論を導いているか?このタイミングでいま一度立ち止まって検証することも有意義と思われます。

次回は引き続き[設例 6-1]を用いて、検討上の「難所」について見ていきます。



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