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新収益認識基準の適用指針

会計基準の採用決定における「難所」~待ったなしの新収益認識基準対応

前回、自社における会計基準の採用を決定するにあたって新収益認識基準の適用指針の『[設例 6-1] インストール・サービス』を用いて【理論的に説明している】ということが、どのようなことを指すのか見てみました。

今回は『[設例 6-1] インストール・サービス』を用いて、【理論的に説明している】状況とするための「難所」と考えられるポイントについて見ていきます。

※前回の記事はこちらからご確認ください「新収益認識基準の規定に沿った判断過程の説明~待ったなしの新収益認識基準対応

1.基準の理解とは別にある「難所」

新収益認識基準では、判断の尺度として例えば前回見てきた第34項の「別個の財又はサービス」の考え方を示しています。

(別個の財又はサービス)
34. 顧客に約束した財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、別個のものとする。
(1) 当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可能性があること)
(2) 当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できること(すなわち、当該財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)

このような新収益認識基準の考え方がすべて理解できれば、自社の会計処理方針は適切に決定できるか?といえば、じつはそうでもなく、もう1つ大きな課題があります。

2.事実の認定の難しさ

設例における前提条件として例えば「(3) A 社が提供するインストール・サービスは、同業他社も日常的に行っているものであり」というものがありました。これは、上記、第34項の「当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること」を具体的に示すものであります。

しかし、実際には、自社がソフトウェアを販売した後で、「インストール・サービスを同業他社も日常的に行っている」ことが観察できる状態にある例はかなり限定的と考えられます。ソフトウェアを開発し、販売~保守まで自社で行える体制を持っていれば、インストール・サービス以降のプロセスを同業他社に委ねることはあまりないと思われます。

そうなると、「インストール・サービスを同業他社も日常的に行っている」ことが「観察できない」ために[設例 6-1]の結論が変わるかといえば、必ずしもそうではありません。「当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること」が満たされている限り結論に変わりはありません。

「観察できない」場合であっても、「技術的に同業他社でも容易にインストール・サービスが可能」であることが示せれば、引き続き「当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること」という状態であります。

しかし、多数の事例でそのことが示せれば「論より証拠」として話は早いですが、事例が少ない中で、「他社でも容易にできること」を、ソフトウェアの専門家ではない監査人に説明することはそれなりに困難を伴うことが予想されます。

このように、設例では前提条件として簡単に記載されている事柄について、実際には事実認定(本事例では「インストール・サービスを同業他社も日常的に行っている」こと)を適切に行い、監査人と同じ認識を持ってもらうことは1つの「難所」となりえます。

3.「独立販売価格」という難所(その1)

次にもう1つの大きな難所について見ていきます。前回の説明で、以下のような金額例を挙げていました。

① ソフトウェア・ライセンスの移転 2,400円
② インストール・サービス 1,200円
③ 2年間のソフトウェア・アップデート 240円
④ 2年間のテクニカル・サポート 480円
以上①~④の合計で4,320円

①、②、③、④を別々に定価として提供している場合で、常に定価でしか販売されていない場合は、このように金額を分けることができますが、実際には①と②はセット価格であることが多いと思われます。場合によっては①~④の合計で値付けをする、あるいは、導入件数に応じて②をディスカウントする例などもあり、①~④の金額を個別に観察し、特定することは容易ではないことが多いと考えられます。

しかし、新収益認識基準の特徴の1つであるいわゆる5ステップアプローチにおいて、①~④の総契約金額4,320円を構成する各履行義務の充足時期(売上計上のタイミング)が異なる場合、各タイミングで計上する売上を決めるために、①~④の金額を適切に配分する必要があります。この時に参照されるものが「独立販売価格」になります。

仮に営業政策上、初期支出を抑えた価格設定で取引を行った場合でも、その価格設定にかかわらず独立販売価格をもって各履行義務に取引価格を配分し、それぞれの履行義務の充足時に配分された金額で売上を計上することになります。

(図:5ステップアプローチの概要)



「独立販売価格」の定義は、「財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格」をいいます(新収益認識基準第9項より)。そして、独立販売価格が直接観察できない場合は、独立販売価格を見積る必要があります(新収益認識基準第17項より)。

独立販売価格は、自社で観察できなければ見積もってでも数値を決定する必要があり、さらにその合理性について、監査人と合意を得る必要があります。

次回は「独立販売価格」という難所(その2)として、独立販売価格の決定に関する課題について見ていきます。



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