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収益認識セミナーレポート「事例編」前編

セミナーレポート「新しい収益認識基準への対応」事例編(前編)

上場企業向けセミナー
「新しい収益認識基準への対応」2019年からの対応プロジェクト始動に向けて

主催:株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング
開催:2019年8月21日

2018年3月に新たに「収益認識に関する会計基準」が基準化され、2021年4月以降開始する会計年度より強制適用となります。

株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングでは、新基準により収益認識がどのように変わるのか、また業績や業務にどのような影響が及ぶのかを解説するセミナー「新しい収益認識基準への対応」を開催いたしました。

<セミナー「新しい収益認識基準への対応」講演内容>
・本基準の基本となる5つのステップを平易な言葉と取引例で理解する「基礎編」
・基礎編で理解した5つのステップを実際の取引においてどのように検討するのか、事例を用いて説明する「事例編」
・新しい収益認識基準が法人税や消費税にどのような影響を及ぼすかを解説する「税務編」
・新しい収益認識基準の適用により影響が及ぶ部署や業務、および収益認識検討プロジェクト推進にあたっての留意点を解説する「対応編」

4つのパートに分け解説を行ったセミナーのなかから、前編・後編の2回に分けて「事例編」をご紹介します。

<大好評のセミナーシリーズ>
2019年11月開催の同セミナーのお申込みはこちら セミナー「新しい収益認識基準への対応」



分かりにくいと言われている収益認識基準について、事例を用いることで理解を深め、今後どのような点を検討すればよいのかのヒントを得ることを目的として、「事例編」の講演を行いました。

事例編では、下記の5つの事例を取り上げ、「基礎編」の5つのステップとの関係や、実際の取引においてどのように検討を進めたらよいかについて細かく解説を行いました。レポートではこの中から前編として1~3についてレポートを行います。

1. 本人と代理人の区分
2. 据付サービス
3. 重要な統合サービス
4. ライセンスの供与
5. カスタマー・ロイヤルティ・プログラム

1 本人と代理人の区分

<事例>
A社(当社) ウェブサイトを運営
B社 製品Xを販売
取引内容 ・B社は、A社のウェブサイトを通じて製品Xを顧客に販売する
・A社は、上記の販売の際、販売価格の10%の手数料を得る
・ウェブサイトを通じて販売することでB社と顧客との決済が容易となる
・A社は、顧客に製品Xが提供されるように手配した後は、それ以上の義務は負わない

上記の事例では、ウェブサイトを運営するA社(当社)は本人か代理人か?を判断することが必要です。これからその判断の過程を見ていきます。

1-1. どのような場面で本人と代理人の区分が必要となるか

本人か代理人かの判断は、新しい収益認識基準の5つのステップのうちの2つ目、「履行義務の識別」に関係する問題です。

まず始めに、「何が履行義務にあたるのか?(=取引で提供される「財・サービス」とは何か?)」を考えます。

この事例では、「製品Xを顧客に販売すること」が履行義務に当たりますが、この製品Xの販売には、ウェブサイトを運営するA社(自社)のほか、製品Xを販売するB社が関与しています。 このように、A社(自社)以外の会社が取引に関与している場合に、A社(自社)が「本人」か「代理人」かを判断することが必要になります。

今後、収益認識基準の適用検討に際して売上取引を分類・整理していくにあたっては、各取引に「自社以外の会社が関与しているか否か」を確認していただく必要があります。
そもそも自社しか関与していない取引であれば、本人か代理人かの検討は不要です。
ただし、この事例のように他社が関与している取引であれば、自社が本人に該当するか代理人に該当するかの検討が必要となります。

なお、本人か代理人かの違いは、以下のとおり収益認識の金額に影響してきます。

■製品Xを自ら提供している場合には、A社(当社)は本人であり、取引価格で収益認識(売上計上)を行います。
■製品Xを手配したに過ぎない場合には、A社(当社)は代理人であり、手数料のみ収益認識(売上計上)を行います。

どのような場面で本人と代理人の区分が必要となるか

(図表1)収益認識に必要な本人と代理人の区分

1-2. 本人と代理人の区分方法

本人と代理人の区分、つまり「自ら提供しているか手配しているに過ぎないか」を判断する際には、財・サービスが顧客に提供される前に、当該財・サービスを支配していたか否か?を検討する必要があります。

「支配」とは、資産の使用を指図し、残りの便益のほとんど全てを享受する能力のことをいいます。分かりやすく言いますと、「財・サービスが顧客に提供される前に、当該財・サービスを自由に使えて、そこから得られるキャッシュ・フローが自社に入ってくるかどうか」ということになります。

本人と代理人の区分については、次のような判断指標も示されています。

(1)財・サービスを提供することについて主たる責任を有しているか?
(2)財・サービスを提供する前に在庫リスク(売残り・陳腐化・破損)を有しているか?
(3)取引価格の設定に裁量権を有しているか?

なお、この判断指標を使用する際には以下の点に注意する必要があるとされています。
⇒財・サービスの性質や契約条件により各指標と支配への関連度合いが異なること。
⇒異なる契約においては説得力のある根拠を提供する指標が異なる可能性があること。

1-3. 事例への当てはめ

■「支配」の判断
財・サービスが顧客に提供される前に、当該財・サービスを支配していたか否か?

A社(当社)は注文を受けた顧客以外に製品Xを提供できず、また、B社が顧客に製品Xを提供することを禁止することもできない。A社(当社)は製品Xを自由に扱えない。

A社(当社)は製品Xを支配していないと判断。

■判断指標
(1)財・サービスを提供することについて主たる責任を有しているか?
    ⇒製品Xの提供に主たる責任を負っているのはB社と判断。
(2)財・サービスを提供する前に在庫リスクを有していたか?
    ⇒A社(当社)は製品Xの売れ残りリスク、破損リスク、返品リスクを負っていないと判断。
(3)取引価格の設定に裁量権を有しているか?
    ⇒製品Xの販売価格の設定はB社が行っていると判断。

以上により、A社(当社)は代理人と判断され、手数料のみ収益認識(売上計上)を行うこととなります。

本人と代理人の区分については、「私の会社は商社や百貨店ではないので検討する必要はない」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば、「販売した製品の修理窓口とはなっているが、修理作業はベンダーすべて丸投げしている」といった場合はどうでしょうか?他社が関わる販売取引がある場合には、自社が本人か代理人かの検討を慎重に行うようにご留意ください。

2 複数の財・サービスが含まれる取引(据付サービス)

<事例>
A社(当社) 設備Xの販売と据付サービスを提供
B社 顧客
取引内容 ・A社はB社に設備Xの販売と据付サービスを提供する
・設備XはB社独自の仕様ではなく、単独で稼働できる
・据付サービスは複雑ではなく、同業他社も当該サービスを提供できる

上記の事例では、「設備Xの販売」と「据付サービス」とが別個のものか否かを判断する必要があります。これからその判断の過程を見ていきます。

2-1. どのような場面で財・サービスが別個のものか否かの判断が必要となるか

財・サービスが別個のものか否かの判断は、新しい収益認識基準の5つのステップのうちの2つ目、「履行義務の識別」に関係する問題です。

まず始めに「何が履行義務にあたるのか」を考えます。

この事例では、「設備Xの販売」と「据付サービス」が履行義務に当たりますが、このように、ある取引に複数の財・サービスが含まれる場合には、それぞれのサービスが別個のものか否かを判断する必要があります。

なお、別個のものであるか否かの違いは、収益認識の単位(まとまり)に影響してきます。

■財・サービスが別個のものである場合には、それぞれの財・サービスを別々の履行義務として収益認識を行います。
■財・サービスが別個のものでない場合には、それぞれの財・サービスを単一の履行義務として収益認識を行います。

のような場面で財・サービスが別個のものか否かの判断が必要となるか

(図表2)財・サービスが複数ある場合に必要な判断

2-2. 「別個のものか否か」の判断方法

下記の要件のいずれも満たす場合には、「別個のもの」と判断します。

(1)財・サービスから単独で便益を享受できる
     あるいは、容易に利用できる他の資源と組み合わせることにより便益を享受できる

(2)財・サービスが契約に含まれる他の約束と区別して識別できる
 ⇒複数の約束が区分して識別「できない」要因として以下の例が示されている。
・自らが責任を負うのは、契約の全体的な管理と、様々な財・サービスをインプットとして、それらを結合後のアウトプットである成果物にまとめ上げることである場合。
・ある財・サービスが、契約に含まれる他の財・サービスを著しく修正するか、顧客仕様のものとする場合。
・契約に含まれる財・サービスの相互依存性、相互関連性が高く、著しく影響を及ぼすものである場合。

2-3. 事例への当てはめ

(1)財・サービスから単独で便益を享受できる
     あるいは、容易に利用できる他の資源と組み合わせることにより便益を享受できる

⇒B社は設備Xを単独で稼働できること、また、据付サービスは複雑ではなく同業他社も同様のサービスを提供していることから、設備Xと据付サービスは別個のものと判断。

(2)財・サービスが契約に含まれる他の約束と区別して識別できる
⇒据付サービスは複雑なものではなく、設備Xを著しく修正したり顧客仕様のものとしたりするものではないこと、また、据付サービスは同業他社も提供できるものであり、設備Xとの相互依存性、相互関連性は高くなく、著しく影響を及ぼすものでもないことから、設備Xと据付サービスは別個のものと判断。

以上により、設備Xの販売と据付サービスは別個の履行義務と判断され、それぞれ別々に収益認識(売上計上)を行うこととなります。

3 複数の財・サービスが含まれる取引(重要な統合サービス)

<事例>
A社(当社) 建設会社
B社 顧客
取引内容 ・A社は病院を建設する契約をB社と締結した
・A社はプロジェクトの全般的な管理に対する責任を負っている
・当該契約には、設計、現場の清掃、基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の据付及び仕上げが含まれる
・これらの財・サービスの多くは、A社または同業他社により、他の顧客に対して日常的に単独で提供されている

提供する財・サービスが複数ある場合に、それぞれのサービスが「別個のものか否か」を判断するもう一つの事例をご紹介します。

3-1. どのような場面で財・サービスが別個のものか否かの判断が必要となるか

当事例においても、先の事例2と同様に、取引に複数の財・サービス(設計、現場の清掃、基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の据付及び仕上げ)が含まれているため、それぞれのサービスが別個のものか否かを判断する必要があります。

3-2. 「別個のものか否か」の判断方法

こちらも先の事例と同様、下記の要件のいずれも満たす場合には、「別個のもの」と判断します。

(1)財・サービスから単独で便益を享受できる
     あるいは、容易に利用できる他の資源と組み合わせることにより便益を享受できる
(2)財・サービスが契約に含まれる他の約束と区別して識別できる

3-3. 事例への当てはめ

こちらも先の事例と同様、下記の要件のいずれも満たす場合には、「別個のもの」と判断します。

(1)財・サービスから単独で便益を享受できる
     あるいは、容易に利用できる他の資源と組み合わせることにより便益を享受できる

⇒B社は「設計、現場の清掃、基礎工事、・・・」の財・サービスから単独で、あるいは同業他社が提供するサービスと容易に組み合わせて便益を享受することができることから、「設計、現場の清掃、基礎工事、・・・」はそれぞれ別個のものと判断。

(2)財・サービスが契約に含まれる他の約束と区別して識別できる
⇒A社(当社)はプロジェクトの全般的な管理責任を負っており、さまざまな財・サービス (インプット)を、契約の目的である病院(結合後のアウトプット)にまとめる重要なサービスを提供する義務を有していることから、 「設計、現場の清掃、基礎工事、・・・」は区分不可(単一の履行義務)と判断。

以上により、設計、現場の清掃、基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の据付及び仕上げは区分不可(単一の履行義務)と判断され、病院の建設という1まとまりで収益認識(売上計上)を行うこととなります。

新しい収益認識基準への対応「事例編(前編)」

「新しい収益認識基準への対応」として、基礎編・事例編・税務編・対応編と4つのパートに分けて実施したセミナーの中から、事例編(前編)のレポートは以上です。


株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングでは
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