• M&A

2020.08.03

2020年のM&A市況-ウィズコロナ時代を見据えて- 

2020.08.03

2020年は新型コロナウィルス感染拡大(以下、コロナ)の影響により、さまざまな業種、業界に大きな影響を与えています。M&Aに関しても同様で、コロナ前とコロナ後ではM&A市況は様変わりしています。ウィズコロナ時代を見据えた2020年のM&A市況について解説していきます。

バリュエーションへの影響

コロナの影響により、上場企業の株価も大きく下落しました。M&Aのバリュエーションについて、ポジティブな影響を受けている業界とネガティブな影響を受けている業界に分けて説明します。

■コロナの影響がバリュエーションにポジティブな業界

2020年3月に大きく株価は下落しましたが、3カ月後にはハイテク株が中心のナスダックは史上最高値を更新しました。また、GAFAMのような大型ハイテク株だけでなく、ウィズコロナ時代にマッチした銘柄の大幅な株価上昇が目立っています。例えば、米国であればオンラインビデオ会議のZoom、電子署名のDocuSign、家庭用フィットネス機器のPelotonなどが挙げられます。

ウィズコロナ時代において、在宅勤務や紙の手続の廃止、各種オンライン化などが急速に進んでいますが、これらを支援するサービスの存在感が日々増しています。2020年後半、これらのサービスを提供している未上場会社が、ウィズコロナ対応を急ぐ大手企業から高いバリュエーションで買収されるという事例が出てくるかもしれません。

■コロナの影響がバリュエーションにネガティブな業界

コロナの影響がバリュエーションにネガティブな業界

人が外出して消費を行うことが収益源泉の業界は、大きく株価が下落しています。例えば、航空業界、旅行業界、外食業界、アパレル業界、デパートなどが挙げられます。レンタカー大手のハーツ、デパートのニーマンマーカスなど、大手企業の破産も増えてきています。

オンライン販売やテイクアウトサービスなど、ビジネスモデルの変革にうまく対処できなかった企業が、救済的に割安なバリュエーションで買収されるケースも増えてくるものと想定されます。

投資家のマインド変化について

コロナはバリュエーションだけでなく、投資家マインドにも影響を与えています。ベンチャーキャピタルへの影響とM&Aプロセス自体に対する影響に分けて説明します。

■ベンチャーキャピタルへの影響

スタートアップのシード、アーリー、ミドル、レイターの各ステージに対する影響をみてみましょう。シードやアーリーのステージについては、コロナの影響により、投資が抑制されているといった状況は生じていません。反対に独立系VCであるANRIなどは、シードやアーリーへの投資を増やしています。

一方で、ミドルやレイターのステージについては、コロナ影響を受けざるを得ません。あと少しでIPOできるという状況ではあるものの、コロナによる影響でバリュエーションが付きづらく、IPOを見送る企業も増えてきています。そのため、ミドルやレイターのステージに対する、ベンチャーキャピタルの評価は厳しいものとなり、今までの状況であれば資金調達できていた企業が、急に難しくなってしまったという状況になりつつあります。

老舗スタートアップが資金調達することができず、大手企業の傘下に入るといったM&Aが増加するのではと予想されます。特にウィズコロナ時代に花を開くことが確実なデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の企業は大いに可能性があるでしょう。

■M&Aプロセスの変化

M&Aプロセスには、トップ会談と呼ばれるお互いの経営者同士が顔を合わせて信頼感を醸成するといったものがあります。ウィズコロナ時代には、対面でのミーティングが開催されづらく、オンライン会議が主流になるかもしれません。M&Aのトップ会談でオンライン会議を使って、お互いを分かり合えることができるのかという点が疑問に残ります。

加えて、国をまたいだ長距離移動が事実上困難になっており、クロスボーダーのM&A案件はほぼ止まっている状況です。2020年はクロスボーダーのM&Aではなく、国内のM&Aが中心となるでしょう。ウィズコロナの時代が長引けば長引くほど、クロスボーダーM&Aの件数は減少することになると思われます。

しかし、ベンチャーキャピタルではスタートアップへの投資をオンラインミーティングだけで、一度も直接会ったことがないまま投資実行するケースが出てきています。M&Aの世界でも、小規模なものであれば一度も経営陣と会ったことがないままM&Aが成立するという事例が、ウィズコロナ時代には当たり前になるかもしれません。

ウィズコロナを見据えた2020年のM&A市況

コロナによるネガティブなニュースは多かったものの、過去に類を見ない大規模な量的緩和政策により、資金自体は社会全体に回ってきています。例えば、アメリカのFRBは個別企業の社債を買い入れるプログラムを開始させています。日本でも持続化給付金、特別定額給付金、雇用調整助成金の特例拡充など、リーマンショック時の2倍となる経済対策を行っています。

ゼロックスがHPへの約3.7兆円の買収を取りやめるなど、新型コロナウィルスは大型M&Aに影響を及ぼしていますが、世界各国は経済活動の再開に自信を持っています。コロナのM&A市況への影響は一時的とも言え、2020年の後半に向けて下記のタイプのM&Aが増えてくるものと考えられます


<2020年後半に向けて増加が見込まれるM&A>
・ウィズコロナ時代の中心を担う新興企業
・コロナ影響を大きく受けてしまった企業の救済型M&A
・資金調達できなかったスタートアップの大手傘下入り
・国内同業同士の統合

M&Aを検討する場合、対象会社の事業内容の検討に加えて、会計・税務・法務・労務と幅広く考慮しなければなりません。当社は、これらをワンストップでアドバイスを提供できる体制を整えています。株価算定やデューデリジェンスのご相談は、株式会社コーポレート・アドバイザーズアカウンティングへお気軽にお問合せください。


株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングへ
お気軽にご相談ください

こんなお悩みはありませんか?

❏ 連結決算のためのマンパワーが不足している
❏ 連結精算表や連結キャッシュ・フローが正しく作成できているか不安
❏ 収益認識基準への対応が思うように進まない。この先どのように検討を進めればよいのかわからない。
❏ 見積りや判断を伴う項目(投資評価、減損会計、税効果会計など)について手戻りが発生しないように、予め監査法人の気にするポイントをおさえて検討したい。
❏ IFRSの任意適用を検討しているが、どのように進めたらよいか分からない。適用した場合の影響や、プロジェクトの進め方について相談したい。

❏ 海外の子会社を買収あるいは設立したが、連結決算上どのようなことに注意したらよいか分からない

経験の高い公認会計士が、皆様のお困りごと解決のヒントをご提供します。ご相談はお気軽にお問合せください。

CAレポート一覧へ戻る

その他の業務分野