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2019.01.04

M&A成功確率向上のポイント-人事・労務マネジメント上の必要なアプローチ

2019.01.04

近年、多くの企業が成長戦略の一環としてM&Aを活用しています。ただ、M&A実施後に人事・労務上のトラブルが表面化し、レピュテーションリスク(信頼・評判の毀損)に発展するケースも見受けられます。そこで、再注目されているのが、M&A実施前後に実現可能な「人事・労務デューデリジェンス」です。

今回は、「M&A成功確率向上セミナー2018『買収後を見据えて知っておくべきポイント』」より、抜粋してお伝えいたします。

買い手に移転されるリスクの認識(労務DD)

労務DDでは、主に対象会社の労務実態を把握し労務リスクを洗い出す調査になります。労務リスクには、金銭リスク、指導リスク、訴訟リスクなど様々なリスクがあり、企業価値に直接影響を及ぼす未払い残業代や労働保険未加入問題などがあれば、マイナス要因として評価し、適正な売買価格への調整を行います。

PMI(Post Merger Integration)を見据えた人事マネジメント上の課題分析(人事DD)

人事DDでは、M&Aのスキームやリスクフォーカスの粒度の違いにより調査項目も変わりますが、基本的にはM&A後のPMIを見据えて、人事マネジメント上の課題を抽出します。

例えば、拠点の統廃合に伴い人材移管がある場合には、

  1. ①M&A直後に事業継続できる人材の量と質を維持、確保できているのか
  2. ②どんな人員構成で、どれくらいの人件費で機能しているのか
  3. ③職制や役割、権限等の歪みが生じていないか

等を洗い出します。もしも人事マネジメント上の課題があれば、「いつ、どのような対処・対応をすべきであるのか、あるいは、解消するのにどれくらいのコストがかかりそうなのか」など、予測可能と考えられる材料をできる限り抽出しておくことがポイントです

将来的に統合を視野に入れている場合には、双方の人事制度や報酬水準のギャップ、企業文化の違いについても把握しておくことが肝要です。

人事マネジメント

PMIの狙いは、「人的パワーの維持」と「人事制度の再構築」です。

環境整備や人事制度を再構築により魅力ある新体制を打ち出すことで、旧体制との決別を促し、人材流出を防ぎ、社員のモチベーション向上につながります。企業としてもより強固な体制を築くことになりますので、ブランディングにも効果が期待できます。

デューデリジェンス時点で「ヒト」に焦点を当てることがポイント

このようにM&A前のDD時点で経営資源としての「ヒト」に焦点を当てることで、統合の失敗リスクを下げ、統合後のスムーズな運営が可能となります。早い段階から人事マネジメント上の課題を抽出し、PMIの展望、構想を練ることは前準備として必要なプロセスといえるでしょう。

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