• 上場企業会計

2022.12.23

キャッシュ・フロー計算書【1】

2022.12.23

キャッシュ・フロー計算書は、一定期間におけるキャッシュの増減を活動区分別に、営業活動、投資活動、財務活動の区分に表示した財務諸表であり、貸借対照表、損益計算書に続く第3の財務諸表とされています。
日本では、“連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準”の制定により、平成11年4月1日以降開始する事業年度から、金融商品取引法の適用を受ける上場企業等において開示が義務付けられています。

このコラムでは、キャッシュとは何か、キャッシュ・フロー計算書とはどういうものか、についてご説明していきます。

キャッシュとは

キャッシュとは手元資金であり、現金、若しくは直ぐに現金化できる現金同等物を指します。

具体的には、現金とは、手許現金、当座預金、普通預金、通知預金などの要求払預金のことをいいます。

現金同等物とは、3ヶ月以内に満期がくる定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託といった容易に換金可能かつ価値変動のリスクが僅少な短期投資をいいます(連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準より)。

なお、質権が設定された預金等の拘束性預金は直ぐに現金化することが出来ないと判断されるため、現金同等物には含まれません。

キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書とは、企業における会計期間内の手元資金の出入りを示す財務指標です。
つまり、どの程度の手元資金を支払い(減少)し、どの程度の手元資金を回収(増加)したかを表現した指標です。

キャッシュ・フロー計算書では、キャッシュ増減の要因を、3種類に分けて表現します。

  • 営業活動によるCF(本業によるもの、その他に税金の支払等)
  • 投資活動によるCF(固定資産や有価証券購入等の投資活動によるもの)
  • 財務活動によるCF(借入や社債・新株発行等の資金調達活動によるもの)

損益計算書との違い

損益計算書は、収益項目と費用項目を列挙し、差引額を利益として表現します。 原則的に発生主義により収益計上と費用計上を行うことから一定期間の経営成績を表現する財務指標ではあるものの、損益計算書に計上された収益及び費用に資金的な裏付けがないケースもあるため、手元資金の増減を正確に反映していません。

例えば、商品を信用販売する場合は、キャッシュの受入は後日となりますが、損益計算書上は顧客が検収した時点で収益項目になります。

また、固定資産については、購入の際の支払時にキャッシュの支出となりますが、損益計算書上は一定年数に分割され減価償却費として費用項目になります。

さらに、金融機関からの融資を受けている場合、借入金の返済はキャッシュの支出となりますが、損益計算書上では支払利息以外は費用項目になりません。

つまり、損益の状況を把握することと、手元資金の増減を把握することは別の方法で実施する必要があります。

貸借対照表との違い

貸借対照表は、会計期間末日時点の資産項目、負債・純資産項目を列挙し、資産の保有状況と資金の調達状況(借入金・株主資本)を表現します。

財政状態を表す財務指標であるものの、一定期間内において、どのような要因で手元資金が増減したかを表していません。

つまり、貸借対照表では前期と比較してどのくらい現金及び預金が増減したかは分かりますが、営業活動により増減した結果なのか、それとも他の投資活動や財務活動によって増減した結果なのか把握することはできません。

以上のように、企業の手元資金の増減状況と増減の要因を把握するために、キャッシュ・フロー計算書の作成は重要なものになります。そのため、開示が義務付けられていない企業でもキャッシュ・フロー計算書の作成は有用です。

損益計算書が同じであってもキャッシュ・フロー計算書が異なる例

損益計算書が全く同じ状況である会社①②について、キャッシュ・フロー計算書を確認すると以下のような違いがありました。

キャッシュ・フロー計算書の違いは主に以下の要因によっています。

会社①は、創業から間もない成長期にある企業であり、商品ラインナップと販売拠点の拡充を図っています。 商品ラインナップの拡充により、当期末の棚卸資産が前期末と比較し150百万円増加したため営業CFがマイナスとなっています。

また、販売拠点の拡充により、当期末に固定資産を200百万円購入したため投資CFもマイナスになっています。 その資金を賄うため、追加借り入れ300百万円をすることにより財務CFがプラスとなり、結果として手元資金が10百万円増加となっています。

会社②は、業績が安定して成熟期にある企業であり、商品在庫は毎期一定で、期中に固定資産の購入もありません。

そのため、営業利益30百万円に減価償却費40百万円を加えた金額が営業CFとなるためプラスになります。
そこで生じた資金の一部を、借入金の返済50百万円に充当することにより財務CFはマイナスとなりますが、結果として手元資金が10百万円増加となっています。

これらの違いについては、前期と当期の貸借対照表を比較してみればある程度把握できますが、キャッシュ・フロー計算書を確認することでよりはっきり内容を把握することができます。

次回は、キャッシュ・フローの読み方、作り方についてご説明していきます。

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