キャッシュフローに関するコラムの第2回です。
前回 はキャッシュフローの定義についてお伝えしました。
今回は、読み方と作成方法の概要をお伝えします。
各項目の読み方について
①営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)
本業によるお金の出入りがわかります。当項目は下記の要素から構成されています。
(1)商品の販売等による営業収入
(2)原材料又は商品の仕入支出
(3)人件費支出
(4)経費等その他の営業支出
(5)上記以外(利息の受払、法人税の支払、補償金の受払等)
通常、当期純利益がプラスであれば、営業CFはプラスになります。
当期純利益がプラスであるにもかかわらず営業CFがマイナスとなっている場合には、
売掛債権や棚卸資産などの状況に注意をしてみましょう。
これらが大幅に増加している場合には、売掛債権の回収が順調に行われていなかったり、
棚卸資産の滞留が発生していたりする可能性があります。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローを表現する方法として、
「直接法」と「間接法」の2つの方法があります。
「直接法」は、主要取引である上記(1)~(5)を総額で記載します。
主要な取引ごとに総額を示すので資金の流れを直接的に
詳しく把握することができますが、キャッシュの出入りを取引と
紐付けて把握する必要があるため、作成に多くの負担を要します。
「間接法」は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対し、
減価償却費などの非資金損益項目、投資活動と財務活動にかかる損益項目、
営業活動に関する資産・負債の増減等の必要な調整項目を加減することで、
結果として主要取引である(1)~(5)を間接的に算出します。
現状では、おおむねほとんどの上場企業が「間接法」により開示しています。
その理由は、連結キャッシュ・フロー計算書と連結財務諸表との関連が分かりやすく、
作成が比較的容易であることがあげられます。
②投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)
設備投資など、将来、企業を成長させるために使ったお金がわかります。
当項目は下記の要素から構成されています。
(1)有価証券及び投資有価証券の取得・売却
(2)有形固定資産及び無形固定資産の取得・売却
(3)貸付の実行・回収
(4)上記以外(連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得・売却等)
成長に向けて積極的に投資を続けている会社であれば、投資CFはマイナスになります。
なお、投資CFのマイナスが営業CFのプラスを超える場合は、
外部からの資金調達等によりキャッシュを補填する必要があります。
また、投資CFがプラスの場合は、固定資産や有価証券を
売却してキャッシュを手にしていることがわかります。
③財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)
外部からの資金調達にかかるお金の出入りがわかります。当項目は下記の要素から構成されています。
(1)借入の実行・返済
(2)株式の発行、自己株式の処分
(3)配当金の支払、自己株式の取得
(4)社債の発行・償還
(5)上記以外(リース債務の返済等)
財務CFがプラスの場合には積極的に資金調達をおこなっている状態にあり、対して、
マイナスの場合には過去に調達した資金を順調に返済・償還していることがわかります。
また、財務CFについては、営業CFと投資CFとあわせて総合的に判断することが重要です。
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営業CF(△)、投資CF(△)、財務CF(+)
本業で十分な収入を上げられていないものの、
外部から調達したキャッシュで投資を行っている状態と考えられることから、
創業期や再建途上にある企業のキャッシュ・フローに多いパターンと想定されます。
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営業CF(+)、投資CF(△)、財務CF(+)
本業で収入を上げており、そのキャッシュを投資に回し、
なおかつ積極的に融資を受けている状態と考えられることから、
成長・発展期にある企業のキャッシュ・フローに多いパターンと想定されます。
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営業CF(+)、投資CF(△)、財務CF(△)
本業で十分な収入を上げており、そのキャッシュを投資に回し、
さらに資金返済・償還にも充当できている状態と考えられることから、
安定・成熟期にある企業のキャッシュ・フローに多いパターンと想定されます。
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営業CF(△)、投資CF(+)、財務CF(△)
本業でキャッシュを生み出せず、固定資産の売却等で得たキャッシュを
資金返済に充当している状態にあると考えられることから、
資金繰りに苦労している可能性があり、やや注意が必要です。
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営業CF(△)、投資CF(+)、財務CF(+)
本業でキャッシュを生み出せず、固定資産の売却等と外部からの資金調達で資金繰りを
維持している状態と考えられることから、当面の資金繰りに関して注意する必要があります。
作成方法「原則法と関便法」について
連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法として、
「原則法」と「簡便法」の2つの方法があります。
「原則法」とは、親会社及び子会社の個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算し、
連結会社相互間におけるキャッシュ・フローに係る内部取引を相殺して
連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
「簡便法」とは、個別キャッシュ・フロー計算書は作成せず、
連結貸借対照表の前期末残高と当期末残高の差額、
当期の連結損益計算書や当期の連結ベースでの各勘定科目の増減明細などをもとに
連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
なお、どちらの方法を採用しても最終的に出来上がるキャッシュ・フロー計算書は同じになります。
次回は、「簡便法」かつ営業CFを「間接法」で表示するキャッシュ・フロー計算書の具体的な作成方法と、
キャッシュ・フロー計算書に関する注記について解説します。