新型コロナウイルス感染症拡大による経済への影響が顕在化する中、上場企業はどのように今後の業績予測を公表して行けばよいのでしょうか。
まずは、既に決算発表を行った上場会社の2021年3月期業績予測の事例を分析してみたいと思います(5/12までに適時開示情報閲覧サービスにて公表された3月決算会社の事例より100件を無作為抽出して分析)。
現時点でもっとも多い事例は「業績予想を未公表」としているケースであり、こちらに該当する各社はいずれも「当面の間は先行き不透明である事」を理由に発表を控えています。
一方で、業績予想を公表しているケースでは、コロナの影響を織り込んでいるケースと織り込んでいないケースの両方があります。また、影響を織り込んでいるケースでは、年度の予測は公表せず、第2四半期累計のみの予測を公表しているケースや、予測の前提としてコロナ影響が収束する時期の見通しまで記載するケースも見られます。
経営環境が比較的安定している場合の業績予測作成は、下記のフローが一般的です。
A. 決算の確定をまたず、当年度決算数値の見通しを立てる。
B. 当年度の予算実績分析や、足元における市場動向等の経営環境変化を分析する。
C. 当年度の決算発表までに次年度損益計画を策定して取締役会で審議し、これをもとに業績予測を公表する。
しかしながら現状のような環境では、上記Bに記載した“市場動向等の経営環境変化”がこれまでに経験したことのないものであり予測するのが難しいことから、各上場企業の考え方や対応が大きく分かれてくるものと思われ、その際の判断フローは概ね下記のようなものと考えられます。
①業績予測公表(コロナ影響有)
この選択を行う場合、公表する予測数値と会計上の見積に利用した将来計画(参考:「コロナ禍に伴う3月期決算の動向とポイント【2020年3月期上場企業決算】」の整合性に留意する必要があります。
また、コロナの影響についてはマイナスの影響だけでなくプラスの影響を受ける事業も存在する可能性があるため、企業全体としてはプラスとマイナスの両面を考慮して影響額を算定する必要があります。
なお、当面の予測数値としては公表するものの、今後の環境変化によっては予測数値を変更する可能性がある旨を特に強調して、投資家へのメッセージとして脚注するという方法もあると思われます。
②業績予測公表(コロナ影響無)
数多くの企業が既に影響を受けている、あるいは今後影響を受けると予測している環境下にあることから、この選択を行う場合には、「企業特性として特に考慮すべき影響がない」旨を積極的に説明すべきと思われます。
③業績予測公表(コロナ影響未反映)
コロナの影響を含んでいない予測という点では②と同じですが、コロナによる影響の数値化が不可能なためその影響を反映していないという点で大きく異なります。このケースでは、コロナによる影響の数値化が不可能なため業績予測に反映していない旨を明記する必要があります。
なお、このような会社に対して投資家は、今後見通しが立った時点でタイムリーに業績予測の修正発表がなされることを期待しています。
④業績予測未公表
経営環境が不透明な場合、この方法によらざるを得ない会社もあると思いますが、投資家からすると、投資判断の材料となる予測数値のベンチマークが全くなくなってしまうことになるため、見通しが立った時点でタイムリーに業績予測の(修正)発表がなされることが期待されます。
いずれのケースを取るにしても、
現状の経営環境を将来の業績予測の視点でどのように捉えているか、各企業がそれぞれに置かれた状況を踏まえて、多くの利害関係者に対して十分な説明ができるように準備しておく
ことがポイントになります。
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