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2020.09.02

IFRS採用会社の動向、IFRS適用のねらいとは?

2020.09.02

IFRSとは

IFRSとは、2005年にEUが域内の上場企業に適用を義務付けたことから始まった会計基準であり、現在では世界120か国以上の多くの国と地域で採用されています。IFRSはInternational Financial Reporting Standardsの略で「国際会計基準」や「国際財務報告基準」と訳されています。

日本基準と比較して、IFRSには以下のような特徴があります。

  • 原則主義・・・日本基準のように具体的な数値基準や詳細な会計処理方法を示すのではなく、原則(概念フレームワーク)に従い企業自ら判断する必要がある。
  • B/S重視・・・日本基準は当期の期間損益に重点をおく「P/L重視」の考え方をとっているが、IFRSでは「将来的にキャッシュ・フローを生み出せる資産状況にあるかどうか」を投資家に正しく伝える」ことを重視したB/S重視の考え方をとっている。
  • 公正価値評価・・・日本基準は原則として取得時に支払った対価をもとに資産を評価するという取得原価主義を採用しているが、IFRSでは投資家などが企業価値評価を行うために必要な情報を提供することを主な目的としているため、公正価値による評価が広く行われている。

IFRSは原則主義であり、基準の解釈や運用の判断が各企業に任されていることから、世界の国と地域に広く採用されやすい特性を有していると言えるでしょう。

また、B/S重視や公正価値評価は、投資家目線での企業評価に資する特徴であることから、IFRSは投資家のための会計基準と言われることもあります。

IFRSにはこのほか、「包括利益」や「マネジメントアプローチ」といった特徴もありますが、日本基準においてコンバージェンス(IFRSと同様な会計基準を採用しようとする動き)が進められた結果、現状ではこれらと同様の内容が日本基準にも取り入れられています。

日本企業のIFRS適用状況

現状、日本においてはIFRSを任意適用することが可能です。ただし、IFRS適用にあたっては「有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに関わる記載を行っていること」および「IFRSに関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、IFRSに基づいて連結財務諸表を作成することができる体制を整えていること」が条件とされています。以前はその他に「上場会社であること」や「国際的な財務活動・事業活動を行っていること(外国に資本金20億円以上の連結子会社を有している等)」も条件とされていましたが、これらの条件が撤廃されたことにより、IFRSを適用できる会社が大幅に増えたと言われています。

日本におけるIFRS任意適用会社については日本取引所グループのサイトで確認することができます。2020年8月時点で200社以上の会社がIFRSを適用している状況です。

日本においてIFRSの任意適用が開始された2010年3月期以降のIFRS適用会社数の推移は以下のとおりとなっています。

【金融庁資料「IFRS推移」ファイルの3ページより抜粋】

IFRS採用会社の動向

IFRS適用のねらい

IFRS適用によるメリットとしては以下の点が挙げられます。

  • 経営管理への寄与
  • 比較可能性の向上
  • 海外投資家への説明の容易さ
  • 業績の適切な反映
  • 資金調達の円滑化
  • その他

海外子会社を多く持つ会社においては、既に子会社がIFRS適用しているケースも多く、その場合には日本の親会社がIFRS適用することで「グループ共通のものさし」ができることとなり、経営管理への寄与や比較可能性の向上が期待できます。

また、海外で広く商取引を行っている会社や、海外からの資金調達を検討している会社においては、IFRSを適用することにより取引先や資金調達先とのコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
また、その他に「のれんの非償却」をIFRS適用のねらいとしている会社もあります。特にM&Aを多く行っている会社にとっては重要な検討要素となるようです。

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